コレクション: Jonghyun Nam / ナム・ジョンヒョン
[作品について]
Hanji + Photography
私は、風景と静物を主なモチーフに制作を続けています。
風景写真では「時間の移ろい」を、静物写真では「存在そのものの在り方」を捉えることを意識してきました。私が一貫して向き合っているのは、被写体が本来持つ真正性です。
その探求のなかで、私は写真からあえて「影」を取り除くという手法を選びました。光と影が生む演出を排し、余分な要素をそぎ落とすことで、被写体は輪郭や意味を超え、ただそこに在るものとして立ち現れると考えたからです。
この表現を支えているのが、韓国の伝統的な手漉き紙・韓紙(Hanji)です。
韓紙は千年以上の歴史を持ち、強靭な楮(こうぞ)繊維によって高い耐久性と長期保存性を備えています。「百紙(Bakji)」とも呼ばれ、幾重にも重なる工程を経て完成し、最後の一手は使い手に委ねられます。
写真を刷る行為は、被写体と向き合い、時間を重ね、思考を巡らせる静かな対話でもあります。
韓紙の繊維に深く溶け込んだ写真は、墨絵を思わせる静謐な佇まいを帯びます。沈黙する物たちが、観る者にそっと語りかけてくるような感覚。
光によって生まれ、紙に息づく写真を通して、「見る」という行為そのものを静かに問い直したいと考えています。
[作家について]
1993年、シドニー国際写真展(オーストラリア)にてグランプリを受賞。
2001年、英国にて初個展を開催。以降、ソウルを拠点に日本・韓国を中心として個展・グループ展を重ねる。
韓国のギャラリー、美術館、寺院空間での展示のほか、アートフェアや国際文化交流展にも参加。
近年はヴェネツィア(イタリア)、ジャカルタ(インドネシア)など海外での展示も行っている。