Profile 8

安井 ちさと / Chisato Yasui

陶芸彫刻　制作年

陶器（陶）・釉薬（ベルベット下絵具・呉須・低火度透明釉）

39.5 × 20.5 × 36.2cm

作品について 

Profile シリーズは、多面的な抽象的フォルムと、フォルムの各側面に施された色彩によって、 この世界における個人の存在の多面的な意味と可能性を表現しています。

私は、自分自身を 「多面的で多義的で、特定することが難しい」 「目に見えたり（自覚できる）見えなかったり（自覚できない）する様々な要素から複雑に構成 されている」 と感じています。

「その、自分でも捉えきることのできない複雑な自分自身を、それでもなんとか人間として成り 立たせようとしている“構造”は一体何だろう。」 そんな思いを脈に現れたのが、このシリーズです。

観る角度によって、さまざまな表情を見せるこの作品は、わたしの内面―あるいは内部構造を描 き出した、自画像（自刻像）のようなものかもしれません。 鏡に映るわたしではなくて、自分の内側を掘るように、潜っていくようにして捉えたかたちと色。

このシリーズは、かたちが出てくるたびに「こんな側面があったのか」と私自身を驚かせます。 完成した作品を前に、「もしかしたらここに現れたのは、“わたしひとり”のものではないのかも しれない。わたしのなかにいつの間にか流れ込んできた別の誰かがふと顔を出したのかもしれ ない。」そんなことも、わたしは感じたりします。

作家について

１９８４年愛知県名古屋市生まれ。

現在茨城県結城市の自宅に併設された工房で制作をしてい る。 幼いころから絵を描くことや、現実の世界を手掛かりに空想の物語をつくるのが好きだった。 高校は愛知県立旭丘高校美術科、油画で卒業。大学は筑波大学芸術専門学群へ進学。そのまま 油画を専攻するつもりだったが、大学 2 年次に陶芸に出会い、専攻を油画から陶芸に変える。

２０１０年、筑波大学大学院芸術専攻デザイン領域、工芸・陶磁を修了。 縄文時代から続くとされる陶芸の伝統的な技法、「紐づくり」を制作手法としつつ、型にとら われることのない伸びやかな作品をつくることに定評がある。

２０１５年に SILVER SHELL で初個展「カワヲ辿ル」開催後、本格的に作家として活動を始 める。国内のギャラリーなどでの個展開催、グループ展に参加に加え、２０１８年からは国外 での活動も活発に行い、グループ展参加のほか、陶芸や現代アートのコンペティションに多数 入選、入賞している。

２０２３年は台湾、富貴三義・鶯歌美術館でのグループ展、スイスの AIFA での二人展に参 加。またイタリアで開催された、The 30th Grottaglie Contemporary Ceramic Competition Prize では Honorable Mention Prize を受賞。１０月にポルトガルで開催される XVI Averiro’s Ceramic Biennale では2023年９月 SMP Galley で展示されている“Profile”シリーズの別作品 2 点が展 示予定